1:in Silence

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管制官を務める男の叫びに似た報告が、暗号回線を通じ全員の耳に届いた。 『ネ…ネクストだって!?』 『無理だ!逃げようぜ!』 弱音染みた通信が、彼らの間に飛び交った。その間にも、反応は確実に接近していた。 「オイ!詳しく報告しろ!」 「へ、へい!」 ボスの焦ったような命令に、管制官達は瞬時にコンソールを叩いた。 このあたりは手慣れているらしく、キーボードの無機質な連打音と共に、ネクストのディテールが次々と明らかになっていった。 そしてそれが再びディスプレイに映し出された時、管制室に居た者達は一種の嘲りの感情を抱いた。 そのネクストは、兎に角異様だったのである。 市場では見ることのない歪な形状をした頭部とコアパーツに、逆関節タイプの脚部。それに、グレーとライトブルーの混じった奇抜なカラーリングとパターン。 その外見を例えるとすれば、幼児が適当に組み上げた積木に、これまた適当に色を塗ったような物だった。 「……フフ、諸君!」 突然、ボスはマイクのスイッチを入れ、部下達全員に向け呼び掛け始めた。 「敵をよく見ろ、あんな妙な機体はカラードにも登録されていない。どうせカタリかモグリだろう。返り討ちにしてやれ!!」 ボスのこの宣言に、彼らの士気は再び向上した。 管制官はこの時、カラードのデータとの照会作業を行っていた。その結果、標的とカラードとは関係の無い事が判明しており、それゆえにボスはこのように自信を持って言えたのだった。 「ふふふ……ハッハッハッ!!」 ボスはシートに座り直すと、高笑いを始めた。周囲に居た取り巻き達も、同様に笑う。 しかし、このボスは一つのミスを犯していた。すなわち、見通しが甘かったのである。 「ハッハッ……何!?」 ボスの笑い声は、一瞬で驚愕に変わった。ディスプレイ内の異形のネクストは、突然コアの後部を肥大化させたかと思うと、急加速し、ランドクラブに突っ込んできたのである。 更にその間にも、ネクストは行く手を阻むノーマルの攻撃を細かいブーストでかわし、両手に携えた火器を向け、撃破していった。 「グッ…対空!」 ボスは慌てて命じたが、既に遅かった。 拠点型のAFがネクストに接近された場合どうなるか。それは、単なるワンサイドゲームに他ならなかった。 異形のネクストはランドクラブの上をあっさりと取ると、その砲台に向けトリガーを引いた。
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