1:in Silence

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そのネクストの右手に握られたアサルトライフルと、左腕に備えられたレーザーライフルから放たれた二種類の火線は、砲台の基部を難なく貫き爆散させた。 「うおおっ!?」 爆発による震動が、ランドクラブの管制室を襲う。ボス達の身体もまた大きく揺れ、手近な物に掴まって耐えていた。 本来、AFクラスの兵器となれば、対衝撃用の防護装備はあって当然の物である。しかし、彼らのようなヤクザ連中にまともな資材補給や整備など期待出来る筈もなく、結果としてこのランドクラブは大きく性能を落としていた。 「クソッ!ノーマルを……」 ボスは息を切らしながらも、声を荒げ命令しようとした。しかしその瞬間、ヒビの入ったディスプレイを超高温のエネルギー弾の連射が突き破って管制室を蹂躙し、ボスの身体は言い切る事無く蒸発した。 「……無力化、っと」 外壁を無惨に溶解させられたランドクラブを目の前にして、分厚いパイロットスーツと半透明の液体に覆われた『彼女』は言った。 この時ランドクラブに、目立った損傷は砲台と管制室に至る外壁以外に無かった。廉価版の更に海賊仕様とはいえ、巨大兵器AFを最小限の弾薬・エネルギーだけで彼女は落とした事になっていた。 『ボ、ボス!!』 『手前よくも!!』 そのネクストへと、部下達の駆るノーマル・MTの群団は一斉に銃口を向けた。部下達はこの事態に対し、怒る者から悲嘆する者まで多様な反応を見せた。しかしいずれにせよ、平静を失っているという時点で、彼らの敗北は八割方確定していた。 「……無駄って分かるでしょ?大人しく投降したらどうなのよ」 彼女は公共回線をオンにして呼び掛けつつも、異形のネクストを反転させ、その獲物へと跳ばせた。 ノーマル8、MT13。 レーダーの観測結果が、彼女の脳へと直接送ったものだった。 「…テロ屋やヤクザにしちゃあ頑張ったか……」 彼女は呟きつつ、GA製と思われる人型のノーマルに向け、パルスキャノン──彼らのボスを殺ったのと同じ──を連続照射した。被弾したノーマルは瞬時に原型を失い、倒れ込むと同時に爆発した。 その間隙を突くように、複数のノーマルはネクストに向け、ライフルやバズーカといった武器を放った。 だが、その銃口はいずれも余程見当違いな場所を向いていた。ネクストは急激に加速し、集中砲火を避けるように移動すると、ノーマルの一機をまた蜂の巣にしていた。
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