one time

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「…今日の予定は?」 ジャケットを脱ぎながら 弘人は事務所に声をかけた 会員へのメルマガを作成していた 時枝が振り返って応える 「面接が2件 入ってます。  それと、来週の撮影の事で  電話が欲しいと佐倉さんが」 「了解。 来たら上に通してくれ」 時枝が頷くのを見届け、 2階の仕事部屋へと向かった PCの電源を入れ、窓を細く 開けてタバコに火をつける ここ数日の間、面接に来たのは ことごとくハズレだった事を 思い出して、弘人は溜息をついた 確かに見た目のハデな女性も 広告塔としては必要だが、 現実的に見て、欲しい人材は 男の庇護欲を駆り立てる女性である そういう点においてはキャバクラも 弘人の経営するデリヘルも同じだ 技巧云々は後からいくらでも 身につけさせられるし、 見た目の好みも人それぞれ違う それでも、弘人が求めるのは 良い意味で【演じきる】事が できる女性だけだ そういう意味で言うならば、 午後からの営業開始に合わせて やってきた一人目の希望者は、 見た目はおろか内面すら 合格ラインに満たなかった けれど 二人目の希望者を目にした瞬間、 弘人の胸がざわついた 【この女性は売れる】と 直感が言っている それ以外にも別の何か… ここ数年 感じた事のなかった 感情に戸惑いながらも、弘人は 平静を装って面接を始めた
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