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何がなんだか全く分からなかった。自分の理解を超えるというのはこういう事を言うのだろう…。
目の前の戦闘は続いているし、それ以外の人と車は止まったまま…。
(少し落ち着こう…)
落ち着いている場合でもないような気もしたが、何はともあれ、手にしていたコーヒーを一口すすり(コーヒーは何事も無かったかのようだ)、考えてみた。
(そうか、これは新手のドッキリか映画の撮影だな。けっこう大掛かりだな…。)
(そういえば、前に原宿の歩道で、何人かの男女が全く動かないパフォーマンスをやってたっけ…。あれか~。だとしたら、どっかにテレビカメラがあって撮ってるんだろうから、自分だけ動いていたら、なんか格好悪いなぁ)
それもどうかと思うのだが、自分もとりあえず止まってみた…。
…が、不思議な事に、目の前で繰り広げられる戦闘では、止まっている人にぶつかるかと思いきや、まるで何も無いかのように、すり抜けていた。
(ん~、おかしいな…)
どうもドッキリとは思えず、気を取り直して、映画か何かの撮影だろうと、とりあえず近くまで行ってみる事にした。
数メートルも歩いただろうか。ふいに、目の前の戦闘が止まった。
(あちゃー。やっぱりドッキリだったかな。それとも撮影シーンに映って、邪魔しちゃったかな?)
だが、それも違ったようだ。何故そう思ったか分からないが、自分達以外の動く存在がそこにいる事に、どうも驚いているように見えた。
一体は、まるで蜘蛛のようだった。ヒルズに向かうエスカレーターの真ん前にいるオブジェを二足歩行させたような感じで、
真っ黒い丸い目が顔中いたるところについており、非常に無機質な印象を受けた。頭には五本の角らしきものが生え、身の丈2メートルは越えていた。
(昔見た仮面ライダーに出てた奴かな?)
もう一人は長い黒髪をポニーテールにした美少女で、まるで女座頭市か忍者という出で立ちだった。
(日光江戸村かよ?)
と、一人でツッコミいれてみるが、蜘蛛はその無機質な目で、(当然)無表情でジーッとこちらを見ていた。
美少女は、その愛くるしい目を真ん丸に大きく開けて(口もポカーンと開いていたが)、こちらを見つめていた…。
彼女と目があった瞬間、静寂は打ち破られた…
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