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朝の日差し。
それは一日という時間をリセットする。
それは私も例外ではない。
新しい一日が始まる。
私の隣には昨日拾ってきた少年が猫のように眠っている。
それ以外はいつもの日常。
変哲の無いいつもの朝。
私はそろりと布団を抜け出す。
空からは灰色の雨が降り続いている。雲一つ無い晴れやかな空からは何万もの水玉が降注ぐ。空を覆う灰色の雨。全ての生き物を殺す、死の灰色の雨。
後で物音がした。
少年が起きたようだ。
「おはよう」
私の投げ掛けたこの言葉は伝わっただろうか。
「……」
返事は無い。
私の目の前で少年はその二本の足で立ち上がる。
その動作は緩慢で覚束無いものであったが、最後にはしっかりと大地を踏締めて立ち上がった。
玻璃の様な瑠璃色の瞳が私を捉える。
蒼白だった頬には紅が差し、瞳には光が差していた。
「元気になったみたいだね」
「……」
返事がない。
「ここは私の家。何か必要なものがあったら遠慮しないで私に言ってね」
「……」
返事は無いが、少年はその首をコクンと振り、うなずいた。
どうやら言葉は通じているようだ。
モニターには『あの時』の映像が繰り返し流れている。
少年は一言も喋らずに、その瞳に映像を焼付けんとモニターを眺め続けている。
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