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何処かの監視カメラの映像。
モノクロで画質が悪い映像。
しかし、何がそこであったかをはっきりと伝える映像。
事実を書き留めた映像。
その映像を食い入る様に少年は見つめ続ける。
私は台所へ向かい、少年の食べられるものを調理する。
今ある食材で作れるものは、肉の無いカレーライス程度だろうか。
記録されているレシピを呼び出す。
包丁でジャガイモ、玉葱、人参等を切る。
カレーのルーは甘口で……。
調理が進み、鍋からカレーの香りが漂い始めた。
米もきちんと炊いた。
後は皿に盛り付けるだけ。
「おーい」
少年を私は呼ぶ。
「……」
少年は画面から目を離しこちらを振り向いた。
「食事ができたよ。食べる?」
少年はコクンと首を一振りした。肯定の意をこちらに伝える。
テーブルの上には肉の無いカレーライスが一皿、コップに入った透明な水。そして銀のスプーンが一本。
少年はたどたどしくも右手でスプーンを取り、カレーライスを口へと運んだ。
その刹那、少年の表情が明るくなったように見えた。
少年は夢中でカレーライスを口へと運ぶ。私はその姿をただにこやかに眺めていた。
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