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「お前達が!お前達が僕の仲間を……仲間達を……うっぅ……」
少年は嗚咽を漏らしながらも震えた手にしっかりと包丁を握っている。
「先ずは落ち着いて、ね」
私は出来るだけ優しく話しかける。
「これをどう言い訳する!?」
銀色の一閃。
包丁の尖端はモニターを示している。
「これはどう見てもお前達だろう!お前達が人間を裏切り戦争を起して、世界を支配しだしたこともいいさ!人工的に人類を『栽培』し始めたこともいいさ!お前達がつくった『人類種保管整備工場』……そこで僕は生まれた。僕は人工的に栽培されたのさ。それもいいだろう!だが、何故それを破壊した?何故工場を破壊したのだ!?人類が唯一無二に存在する場所なのに……最後……だったのに……」
再び煌めく銀色の一閃。私の急所を適確に捉える刃。
人工繊維の皮膚が裂け、内部の金属製の骨に刃が突き刺さる。血は噴き出したりはしない。痛みも存在しない。
ただボディに傷が付いただけ。白い表皮が破れただけ。
少年の刃は何度も何度も私を襲う。白い表皮が破壊されていく。
不思議と恐怖心などは無かった。私は私のするべきことを全うした。家庭用介助アンドロイドとしての定、『人を助ける』という運命――さだめ――を。
大戦前から私に書き込まれているプログラムを、私の役目を全うした。
君の為に、人の為に破壊されるならばまたそれも本望かな。それで君が助かるならば……。
少年が刃を振翳す。
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