月のように

第一話

　
　　　　　　 φ

「起立、礼」

　学級委員の号令で帰りのＳＨＲが済むと、生徒達は一斉に騒がしくなる。
　紅葉の周りにも既に何人かの女子が集まって来ていた。中心になっている紅葉も、楽しそうに笑っている。
　ああいうところを見ると紅葉も女の子なんだな、と改めて思い出す。
　それに、周りの女子には悪いがつい紅葉と見比べると、普段は気が付かないが、まぁ綺麗な顔立ちをしている。
　つやつやとした、肩より少し長いセミロングの黒髪は真っ直ぐに落ちていて、他の女子のように化粧をしていない肌は、少しだけ日に焼けて小麦色の一歩手前くらいで、実に健康的だ。
　首筋から肩へ流れるようなラインは、すっと薄く血管が見え、どことなく無防備と言うか、なんというか･･････
　机を間に、３つ４つ挟んだ距離からでもそんなことが見えてしまうのは、両目とも２．０を誇る視力のせいだと思いたい。

　性格もサバサバとして付き合いやすく、意外としっかりしているからか、紅葉は男女問わず人気がある。
　いや、むしろ女子からの人気の方が高いかもしれない。なんせバレンタインデーにチョコレートの数、58個を記録するほどの人気だ。

　言うまでもなく、学校中の男子を探しても紅葉に勝った奴は居ない。
　単純に友チョコ――と言うんだったか――の数も多いらしいが。