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彼女は嘉川 紅葉【かがわ くれは】。幼なじみで腐れ縁。ついでに付け加えると家も一つ挟んで隣だったりする。
健康的な細い体つきで、女子にしては背が高いのか、男子の俺とたいして差はない。
髪は肩口より少し長いくらいで、左右の髪をヘアピンで止めている。
抜群にというほどではないが、顔立ちは割と綺麗なんだろう。クラスの女子の中では3本の指に入るとは思う。
「今度はどうしたんだ? 叱られるようなことをした覚えはないんだが―――」
「ゴメン!」
そんな妙に気恥ずかしい考えを振り払おうと、冗談半分でそんなことを言いかけると、突然手を合わせて謝られた。
当然俺は全く意味がわからない。普段の紅葉という奴は、俺に向かって頭を下げるなんてことはしない。
俺だってそれは同じだ。俺たちには本当に相手に迷惑をかけたり、相手を傷つけたりしたとき以外には無闇に謝らないという暗黙の了解がある。
その紅葉が今俺に向かって頭を下げている。
正直、何が起こったのか見当もつかない俺は、ポカンとする以外に他なかった。
「と、とりあえず何が起こったんだ? えっと・・・・・・あれか、あれ・・・・・・あれか?」
「違う。そんなんじゃなくて、さ・・・・・・」
やっぱり様子がおかしい。いつもならここで、「あれだけでわかるか!」ぐらいのツッコミが入る筈なのに、今日の紅葉はどうにも歯切れが悪い。
というか、あれだけで伝わったんだろうか。意味を含んでなんかいなかったんだが。
「じゃあ・・・・・・隣座るか?」
「うん・・・・・・」
紅葉の様子がおかしいと、なんか俺の調子まで狂ってくる。
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