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爆発した。二人してうっすらと涙目になって。もうこうなってしまえばあとは子どものケンカだ。
「バカとはなんだ! なんで名前出しちゃうんだよ!」
「仕方ないじゃない、不意に口に出ちゃってたんだから!」
その後、結局上手く言いくるめられた俺はバンドに参加することが正式に決定した。
予鈴が鳴り紅葉は先に教室へ戻って行ったが、その帰り際。
「いい? 放課後に打ち合わせがあるから逃げようとはしないでよね。そうなったら引き摺ってでも連れて行くから」
とだけ言い残して屋上を後にしている。言いくるめられた時点で逃げる気なんてはなっからない。無論、気乗りはしないが。
どうせ逃げたところで体力的に劣る俺が同じクラスの紅葉から逃げ切れるはずもない。それどころか、逃げれば紅葉の鉄拳制裁も加わるだろう。
どっちにしろ、逃げたところで損をするのは自分なのだ。
ここは俺が折れるしかない。本当に酷い二択だ。口には出さず、心の中でだけ呟いて本を片付ける。
すでに始鈴が鳴っているが、もうどうせ遅刻だ。そう思いながらゆっくり片付けを進めるが、頭の中はバンドのことでいっぱいだった。
「紅葉、本当に恨むからな」
念のため姿がないことを確認してから呟いた。その直後風に煽られた木の葉が顔面に直撃したのは、ただの偶然だと思いたい。
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