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「パ、パパ……」
(助けて……!)
母親に助けを求めようとする。父親の、暗闇で異様に輝く眼に射抜かれた。逃げようとしたせいで、頬を叩かれる。その勢いで、響介は床に倒れ込んでしまった。
「悪い子だ」
父親が厭らしい笑みを浮かべながら、響介の耳許で囁く。ぞっとした。体が竦む。
(お……母さん……)
(お母さん、助けて……誰か――)
誰でもいい、響介はそう思った。楽になれるなら、助かるなら。
「響介……」
追い詰められた。壁に背中が当たる。怯えた眼の幼児。汗の臭い。嫌だ。嫌だ。嫌だ。声が出ない。気持ち悪い――。
(嫌……だ……)
そこで、記憶が途切れていった。
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