フェアリー・テイルみたいに

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「いやだ!」  体を竦ませる響介の涙を拭い、隆行はより一層強く抱き締めた。 「響介を責める奴は誰もいない」 「言っちゃ、いけないんだ……パパが怒るから……パパに、殺されるから――」  殺されると、いとも簡単に響介は言った。殺されるかもしれない、と思う程、父親からひどい仕打ちを受けていたのだろう。隆行にも、容易に想像できた。もしも、殺されなかったとしても、響介は『殺される』と思った。それだけで十分だ。 「――どんな、夢だった?」  信じたくない、と頭を抱えながら、恐る恐る言った。呼び起こされた記憶に当惑している。 「パ、パパが……いやらしいことをしたんだ」  辱めを受けたときの羞恥や、憤慨といった感情を発散できず、ずっと忘れてきたのだろう。起こらなかった事なのだと思えば、発散する必要も、苦しむ必要性もない。――同性を愛してしまったのは、響介の唯一の誤算だが。 「思い出しちゃ、いけないことだから……」
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