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<取引先の酒場>
ダッチ 「ロクロウ・オカジマ?変な名前だ」
岡島 「気にしてるんだ。放っといてくれよ」
ダッチ 「おっとすまねぇ。“口さがねぇ”のが性分でな」
岡島 「いやいいさ。…しかし…この酒場はひどい。地の果てだ」
瓶が割れたり人を殴る音があちこちでしている
ダッチ 「上手い例えだ。ここはもともと南ベトナムの敗残兵が始めた店だが、逃亡兵なんぞを匿ったりしてるうち気が付きゃ悪の吹き溜まりだ」
「娼婦、ヤク中、傭兵、殺し屋。どうしようもねぇ無法者ばかりさ。嫌いかね、ロック?」
岡島 「居酒屋が一番いいや。だいたい、俺は争いごとには向いてないんだよ」
ダッチ 「そういう顔だ。ベニー、ちょっと電話入れてくるわ」
岡島 「ダッチ!さっき俺のことなんて呼んだ?」
ダッチ 「ロクロウだからロック。クールだろ?」
そう言ってどこかへ行ってしまった
岡島 「ロックねぇ…」
ベニー 「気にしなさんな。あだ名を付けるのが好きなんだよ」
ぐいっと一杯流し込んで話しだす
ベニー「変わってるんだよ、彼は。二年付き合ってわかったことは、タフで知的で変人だってことぐらいだ。理解しようとしたって無理だね」
ロック 「あんただけ感じが違うな。前はどこに?」
金髪に白い肌に眼鏡の男は
とても海賊には見えない
ベニー 「フロリダの大学さ」
苦笑いが浮かぶ
「火遊びが元でマフィアとFBIを怒らせちゃってねぇ。それで…」
レヴィ 「トランクに詰められて“重し”代わりにされるとこを、あたしが助けたってわけよ。クソ話さ、止しなよベニー。昔話をするほど歳は食ってねェ、そうだろ?」
グラスに酒を注ぎながら話に加わる
「♪貴方に一杯、私に一杯♪ってね。せっかく飲(や)りに来てるんだ、もうちょいクールな話をしようや。なぁ日本人?」
チンッ!
レヴィがテーブルに走らせたグラスがロックの目の前のグラスにあたる
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