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酔っ払い程じゃないけど、クリスマスのムードとは掛け離れた覚束ない足取りで、僕は放浪を続けた。
向かってくる人の波が速くなった気がするのは、僕の歩くスピード故か。事実、電気屋を出てから、後ろから手を繋いで歩いてくるカップルに抜かれることが多くなっていた。
人の多い商店街で、特にお客を集めている店を見つけた。黒い背景に銀字で「Silver Crown」と刻まれた看板を掲げるその店には、僕も入ったことがある。
――去年のクリスマスプレゼントを、あの店で購入したのだ。
店のショーケース見て目を輝かせている人達は、実に様々だった。
黒髪と眼鏡がお揃いの真面目そうなカップルや、ボリュームのある金髪がお揃いのチャラいカップル、熟年の老夫婦の姿もある。
僕も店の中に入った。
一人ぼっちの僕は、この店の雰囲気の中で場違いに浮いているけど、別段気にならなかった。
焦点の定まらない目で、ガラスで護られたシルバーアクセサリーを眺める。
――一際(ひときわ)僕の目を引くアクセサリーが、在った。
雪の結晶を模したと思われるそれは、しかし隣の天翼を模したアクセのせいで注目されていないようだ。
僕が彼女にプレゼントしたのと全く同じそれは、店の一番人気の隣で悲しそうに座っていた。
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