11人が本棚に入れています
本棚に追加
ともかく、こんなところに突っ立っていても何も変わりやしない。
僕はアパートに足を向けようとして、方向転換。スニーカーの爪先が指してる方角には、これから行く予定だった市街地が。
「……少し、賑やかな空気に触れようかな」
ぽつりと零し、歩き出す。
何のためかは自分でもよくわからない。
彼女を探そうとしてるのかもしれないし、彼女を忘れようとしてるのかもしれない。
何はともあれ、この行動の理由が彼女であることだけはわかっていた。
アーケードをくぐり、赤煉瓦の敷き詰められた大型商店街を闊歩する。
大音量のクリスマスソングが鼓膜を震わせ、色とりどりの電飾の光が、まだ昼前だというのに網膜に突き刺さる。
商店街を行き交う人の数は、想像よりも遥かに多かった。
いつもは少し先にある巨大アミューズメントパーク兼ショッピングモールに人の大部分を強奪されていたこの商店街なのだが、今年はやけに賑わっている。
この一年で人口が急増した訳ではないので、どうしたことか、と周りに視線を向けてみるも、去年との違いはほとんど見つけられない。
市が一念発起して造った施設を出し抜くような企画でも考えたのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!