ぼやけたホワイトクリスマス

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   ふと、人入りの少ない店を見つけ、なんとなくで入ってみる。  年季を帯びた木の棚に並べられていたのは、幼少期を思い出させる駄菓子の数々。  甘食に棒麩、うまい棒にこんぺいとう、エトセトラエトセトラ。  懐かしさにホッと息を吐くと、レジの横でコロコロした笑みを浮かべているおばあさんと目が合った。  母親に見守られているような、くすぐったい感じを覚えつつ、今まで気になっていたことを尋ねてみる。 「おばあさん、今年はやけに賑わっていますが、何かあるんですか?」  おばあさんは皺くちゃの顔を更に緩めて、癖のある白髪を揺らして、 「さあねぇ。この店の賑やかさは去年と変わらないからねぇ」  それもそうだ。  この店にいるのは、僕を除外すると子連れの女性が一人。手に持つかごから葱が飛び出しているのを見る限り、買い出しの途中で子供にせがまれた、といった具合か。  僕は礼を述べ、30円のふーせんがむ(グレープ味)を一つ買うと、人の流れに再度飛び込んだ。  おばあさんの浮かべていた優しい笑みは、どことなく彼女の笑みと似ていたなぁ、なんて思いつつ。
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