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埃を被った古いスピーカーから流れるクリスマスソングは、昔懐かしのバラードに変わっていた。
ゆっくりとした曲調につられてか、先程よりも穏やかになった人の波に揉まれていた僕が次に足を伸ばしたのは、『街の電気屋さん』と呼ばれる小さなお店。
一世代前のような趣を感じる、高性能や小型などといった単語とは無縁そうな電化製品が、その重たい腰を黄ばんだ白棚に据えていた。
レジの後ろの椅子には、やけに目つきの鋭いオッサンが座っている。頭に剃り込み、頬には×印の傷痕が刻まれており、発するオーラが他者を寄せ付けさせない。
商店街の活気の理由を聞くつもりだったが、あまりのプレッシャーに回れ右。商品を眺めることにした。
「あ……」
思わず声が漏れた。
目についたのはベージュとチャコールグレーのチェック模様のやかん。
別段変わった形状をしている訳ではないが、どことなくかわいらしいやかんだ。
一年前のクリスマスに、彼女が僕にプレゼントとしてくれたのと全く同じモノ。
冷たく、滑らかな表面を撫でた瞬間、僕の頭の奥でパッと記憶が弾けた。
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