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「エレメントの力…。
見てみたいなぁ。」
フェアリーは恐れるどころか興味を示して目を輝かせて言った。
するといつもはだらしない顔をしているエクルが急に顔を引き締めた。
「見世物にするような力じゃないさ…。」
そう言うと少し気まずい空気が流れる。
それを遮るようにエレナが言った。
「あなたも帰るべき所があるでしょう?
私達も今夜泊まる宿を探さなきゃいけないの。
もう行かなきゃ。」
「リリルラ…」
フェアリーが呟いた。
「え?」
良く聞き取れずエクルは聞き返す。
「あたしには『キミ』とか『あなた』じゃなくて『リリルラ』っていうちゃんとした名前があるのよ!」
リリルラは立ち上がって主張した。
「そっか、ごめんなリリルラ。
自己紹介がまだだったな。
オレはエクルで、こっちがエレナ。
…まあ、とにかくそういう事なんだ。
リリルラは安全な場所に帰りな。
もう二度とあんな想いしたくないだろ?」
エクルは優しく言った。
「当たり前よ!絶対に嫌だわ!
助けてくれてありがとね。」
そういうとリリルラは体から一瞬強い光を放つとエクルに近付き、エクルの目がくらんでいる内に頬にキスをして空高く勢い良く飛んで行った。
エクルはしばらく何が起きたか分からなかったが、なんだかエレナの視線が痛く感じる。
「と、とにかく命が無事で何よりだったね。
あははっ!」
焦って、別に悪い事をした訳じゃないのに何か言い訳めいた事を言っているエクルの頬には小さなキスマークが光っていた。
「相変わらず人間以外にモテるわね。」
エレナの一言がエクルの心の奥深くに突き刺さる。
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