プロローグ

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ドアを開くとドアに付いていた鐘が軽快な音をたてて店主に客が入って来た事を知らせる。 「いらっしゃいませ。 食事ですか? 宿泊ですか?」 店主は読んでいた新聞をたたみ、愛想笑いを浮かべ立ち上がった。 「二人なんですけど、部屋は空いてますか?」 少年は店主のいるカウンターに近寄りながら答える。 「えぇ、それならこの宿帳に氏名の記入をお願いします。」 そう言うと店主はノートとペンを差し出してきた。 「…」 少年はスラスラと名前を書き込み、店主に渡す。 「はい、どうも。 えぇとそれじゃあ…」 ノートに目を通した店主はそう言いかけて言葉が途切れた。 そして申し訳なさそうにてっぺんの禿げ頭を掻きながら呟く様に言う。 「あぁ、すみません。 あのぅ…ウチは『ウィザード』の方は他のお客さんが嫌がるので遠慮してるんです…。」 「…やっぱり、ここも駄目ね。」 遅れて入って来た少女がガッカリした様子で肩を落とした。 「他をあたろうか…。」 少年は笑っているようだが少女を気遣っている為で、内心は胸の奥が締め付けられる様な思いだった。
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