ウィザードの力

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ボルドは勢い良く拳を振り下ろした。 しかし、それは虚しく空振りに終わった。 「!?」 ボルドはいきなり目の前にいたハズのエクル達の姿が消えた事を理解出来ず、辺りを見回した。 「ちくしょうッ! どこに消えた!?」 近場には見当たらずキョロキョロとしていると、虫の羽音のような振動音が聞こえた。 空から聞こえるその音源の方を見上げた。 そこにはエクルとエレナがあっけに取られた様子で宙に浮いていた。 何やら青い霧が周りを覆っていた。 良く目を凝らすとそれは霧ではなく、トンボのような羽を持つ生物の群生だった。 「ピ…クシィ…?」 エクルは良く状況が飲み込めず、間抜けな声を漏らした。 エクル達は無数のピクシーに支えられ宙を漂っていた。 「こ、これはどういう事…?」 エレナも訳が分からずキョトンとしていた。 そんな二人の前に一匹のピクシーが進み出た。 「よう。 覚えてるか?」 そのピクシーは無愛想にそう言った。 「あ、お前は…昨日のヤツか!?」 エクルがそう答えるとピクシーはニヤリと笑った。 「借りを作ったまんまじゃ気分が悪いんでな。 返しにきた。」 その台詞にエクルもニヤリと返した。 「相変わらず素直じゃないヤツだな。」 エクルとピクシーが同時にまたニヤリと笑うと、下から声が聞こえてきた。 「普段我々は人間とは干渉しないが、お前らは特別だ。」 「同志を救ってくれてありがとう。」 「我々は人間の見方を少々改めなくてはならないのかも知れないな。」 そんな言葉にエクルは嬉しさとくすぐったさを感じた。 (オレ等のやってる事は無駄なんかじゃなかったんだ!!)
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