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そんな温かな会話を妨げる物がエクルの横を猛スピードで突き抜けて行った。
下から山賊達が火を灯した矢を放っていた。
ボルドは何やら叫んでいる。
相当怒っているみたいだ。
「ゆっくりしている暇はないな。」
エクルが呟くとピクシーが答えた。
「まかせろ!
我々は力は無いが、素早さなら何にも負けないと自負している!
さぁ、同志よ!
恩人を安全な場所へ!!」
その掛け声と共にエクルは何とも言えない浮遊感を感じた。
物凄いスピードで時々迫り来る矢を回転してかわし、山賊達から離れて行く。
「ひゃっっほーう!!」
抑えきれない爽快感。
エクルは思わず叫んでいた。
「くっそおぉっ!!
覚えてやがれぇっ!!
たとえ地獄の果てまででも貴様等を追い詰めてやるからなぁっ!!!」
もうかなり距離を進み、山賊達が点に見えるくらい離れているはずなのにボルドの遠吠えはハッキリと聞こえた。
「勘弁してください…。」
エクルはどこまでもしつこいボルドの執念に恐怖と呆れ、そして少しばかりの敬服の念を込めてそう溢した。
エクル達は凄まじい疲労感に襲われながらも、澄んだ空を蒼い風に乗り大空を駆け抜けた。
(ちょっと想像とは違うけど、子供の頃の夢が一つ叶ったな。)
心地よい風を受けながらエクルは微笑んだ。
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