序章  陥落

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イクタベーレ……それは300年余りしか歴史を持たぬが、かつて世界を支配した悪しき者を打ち滅ぼし世に平和をもたらした英雄が興した由緒正しき城……。 だがその城も陥落寸前……。 城には王子の姉であり、プリーストである女性が……。 プリーストとは傷ついた者を回復する、回復魔法中心に扱える魔導士といったところ。 彼女は傷ついた兵達に回復を施していた……。 だがその額には大量の汗、それに顔はやつれお疲れの様子だという事が伺える。 それでも彼女は手を休めず回復に徹していた……。 回復は大体が座りながら行うもの……王子が城に戻ると座ったままお帰りから始まり、自分が囮になるからその間に逃げなさいと優しく語りかける。 だが王子は…… 「でも姉上が……」 と返す。 それに対し気丈に徹する彼女は立ち上がり……。 パッシーン! 王子の頬に平手打ちをしてきた。 「貴方がここで命を落とせば父上は報われません!!」 鋭い眼差しで、王子を見る……だが王子の事を大切に想っているのだという事が良くわかる。 「ですが……」 「良いからお行きなさい……」 今度は優しく微笑み…… 「そして強くおなりなさい……愛する者を守れるくらい」 と続ける。 疲れている筈の彼女の眼差しは強く、そして輝かしい光を放つ。 それでいて哀しい眼差し……。 そんな彼女の眼を王子は見れなかった。 彼はうつ向き……。 ゆっくりと口を開く…… 「……わかりました……どうかご無事で姉上」 「ええ」 最後に見る者を癒してくれるような美しくそして優しい笑顔を彼に向ける。 王子は城から逃げる際にずっと姉の言葉が小玉していた…… 【強くおなりなさい……愛する者を守れるくらい】 (私は……強くなれるのだろうか……?)
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