109人が本棚に入れています
本棚に追加
城から脱出し、1時間くらいしただろうか……時間すら忘れるくらい馬を走らせた。
王子と共に脱出したのは団長を初め、生き残ったイクタベーレ騎士団の面々。
誰も一言を喋らず……ひたすら馬を走らせる。
誰もが戦に負け、城から逃げなくてはならない事に悔やんでいる。
王子も初陣なのだから、仕方ないと言えばそれまでだが…目の前で父は殺され姉を城に残すしかなかった弱い自分を責め続けていた。
淡々と馬を走らせる中……。
ボォーン!
と大きな音がする……。
後ろを振り返ると城の方角は炎上していた……。
王子の目にそれが映った瞬間……馬から降り数歩城に歩みよる。
そして……
「姉上ー!!」
と叫ぶ。
一同の顔はますます暗くなり、誰もがうつ向き悲しみと己の弱さに嘆いていた……が、それも長くは続かない……。
「おっ!これはこれはイクタベーレの王子様ご一行じゃねぇか」
とニカニカと笑い棍棒を手に持つ盗賊集団が前方に現れる。
「くっ!こんな時に……王子をお守りしろー!!」
と騎士団長が叫ぶ。
「ヒヒヒ……王子の首をバルマーラに差し出せば大金が……ヒヒヒ」
と盗賊が不気味な笑みを浮かべている。
一同は盗賊との戦闘に突入する……。
だが次々に倒されているのはイクタベーレ騎士団の方であった。
(くっ!戦続きで兵達が疲れているのか)
と胸中嘆くのは騎士団長。
そして……
「なんとしでも王子をお守りしろー!」
と叫ぶ。
やがて盗賊の一人が王子の目の前に……
「王子の首貰ったー!!」
とニカニカ笑いながら棍棒を王子に振り降ろそうとする。
「し、しまった!」
と騎士団長が直ぐ王子の元に駆け寄ろうとするが……間に合わない!
王子は一瞬、死の恐怖にかられたが……
【強くおなりなさい…愛する者を守れるくらい】
姉の言葉が響き……。
(私は……)
剣を抜く。
プシューン!!
盗賊が棍棒を王子に振り降ろすより速く、閃光が腹部に走る。
「私は……」
「私は強くなる!!!」
「!?」
騎士団の誰もが殺られたと思ったが……いきなりの王子の反撃に驚く……。
それだけではない!
団長を目視し……
「私の援護を頼む!」
「は…はっ!」
一瞬戸惑うが直ぐ様、王子の元に駆け寄る。
「騎士団の皆は左右から盗賊集団を叩け!!」
と王子が自ら指揮を取る。
(私は強くなる……そしてこの者達と必ずイクタベーレを取り戻す)
と胸中叫び戦うのであった……。
最初のコメントを投稿しよう!