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翌朝もトウコは
黄身を半分残した。
3日めからはとうとう
白身しか食べなくなった。
首をかしげて白身を噛むトウコに
わたしは何も言えなかった。
華奢な体の上につんと立った
形のよいトウコの頭が
白身を噛むたび揺れている。
光に透けたなめらかな髪が
真っ白い耳を隠している。
あの耳が見えない。
わたしとそっくりのトウコの耳。
15才の誕生日の夜に
お互いの耳にピアスを開けた
わたしとトウコのかわいい耳。
怖がるトウコの手を握り
なめらかなほっぺに触れ
背中をとんとん叩いてなだめ
ようやく開けた小さな穴は
あたらしいふたりの絆だ。
トウコは今も
わたしとおそろいのピアスを
付けてくれているのだろうか。
白く小さな角のような
貝殻色のあのピアスは
今でもトウコの耳を
守っているだろうか。
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