幼なじみはボム女

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「男子高校生がアニメ見ちゃ悪いかよ? しかもなんで昼休みに突然萌え談義なんだよ」 多分、萌は俺のこと、便利な歩く辞書みたいに思ってるんじゃなかろうか。 「悪いなんて言ってないよ、ただ……」 萌が俺をみつめる。 まつげの上に揃った前髪が、その大きな瞳をより強調させていて……ん? ――ああ、前髪切ったんだ。 「祥太郎はあたしのこと見て、萌えたりするのかなあって、思って」 ああ、前髪その長さにしたんなら眼鏡とか似合いそうだな。  ん? 「萌に……?」  ――萌え……? 「なんてねー。萌と萌えを掛けてみたりして!」 目の前にいるこの3Dの女に? 萌えない。 まさかあ、断じて萌えない。 いやむしろ萌えたりしない。 「……ねぇ、ちょっと聞いてんの?」 萌えとは、愛である。 なんて携帯で調べたら出てきたコトバがふいによぎったけど、それはただ単に萌えというワードが、 「おーい祥太郎ぅ」 肩を揺さぶられてはっとする、俺。 「萌えの使い方、当たってた?」 無邪気な悪魔が俺に囁く。 正義の幼なじみは、天然系の幼なじみに決して萌えたりしないのだ。 世間知らずの幼なじみをすっかり社会復帰させてやるのが、この俺に課せられた使命なのだ。 「いや、間違ってる。もう全然何から何まで」 昼休みの終わりを告げるチャイムの音が、萌の声に重なる。 「……なんだ、つまんないな」 「なんか言った?」
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