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【 悲劇 】
その日 わたしと彼女の共通の友人が部屋に遊びに来ていた
「う~ 寒ぶっ 寒ぶっ」
廊下の端にある便所から戻り 部屋の扉に手をかけた時 中から二人の言い争う声が聞こえてきた
「わたし もう我慢できない…
確かに彼はいい人だけど、私が一番好きなのはあなたなの それは前からあなたも知っていたじゃない
いつまで こんな事を続ける気なの?」
「(えっ 何の話をしているんだ こんな事っていったい…)」
大きな声をあげる彼女をなだめるように 友人はゆっくりと話はじめた
「もう少しだから… 来月にはアイツも就職して忙しくなる そしたら君どころでは無くなるだろうから」
「(お前達… いったい何の話しているんだよ…)」
「あなたはいつもそうだわ 前は就職活動で大事な時期だからとか 体調が悪そうだからとか
あなたにお願いされたから 私はしばらくだからと思い一緒にいたのに あの人と私のどちらが大切なの?」
「そんな事を言わないでくれ 彼とは孤児院からの付き合いで兄弟みたいなものなのだから…
勿論 君の事は大切に想っている…」
「そんなの嘘」
ガタッ
「な、何をする 止めるんだ 危ないじゃないか」
「どっちか選んで わたしか彼か…
もし 彼を選ぶなら今すぐ貴方を殺して私も死にます」
「(おいおい 黙って聴いていたら殺すだと!?)」
ガラッ
「二人とも何をやってるんだ」
扉を開けると包丁を握りながら友人の前に立つ彼女の姿が見えた
「もう駄目ね 一緒に死んでちょうだい…」
彼女は友人に向かってゆっくりと歩き始めた
「待てよ 何するんだやめろよお前っ」
「貴方には関係無いのでしょ 貴方なんて最初から好きでもなんでも無いんだから…」
グサッ
「………………」
「ご、ごめん… 」
「おい、大丈夫か」
「いいのよ… ごめんなさい… 」
「うわっ うわぁぁぁ」
「おい、落ち着け 静かにしろ… 」
「だっだっ だって し、死んじゃってる…」
「あぁ 分かる…
俺だったら良かったのにな…」
彼女から包丁を取りあげようとした私は誤って彼女を刺してしまった
いや 本当は彼女に対する殺意があったのかもしれない
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