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6章:衝撃的な出会い
2人の初めての出逢いは高校の時。
満員電車での事だった。
「す、すいません… ちょっと通して下さい…」
奥の方から、だんだん女性の声が近づいて来る。
「ちょっと足を上げて… あっ、すみません…」
声はするけれど、姿は見えず。
変だなと思っていると、明夫の足に何かが当たった。
「あの~… ちょっと足をどかして貰えませんか?」
足下を見ると、女子高校生が四つん這いになって何かを探していた。
「少しでいいんです… ちょっと足を動かして…」
「はっ? 何してんだよ?」
「電車賃を落としちゃったみたいで… あれが無いと払えなくなっちゃうんですよね…」
「……電車賃?」
「そうそう… 10円玉が脱走しちゃったみたいで… へへへ…」
「……脱走って」
周りの視線を感じ、辺りを見回すと、みんなが一斉にこちらから目をそらす。
「……確かこの辺にコロコロと…」
「コロコロって… 10円玉を落としちゃったのかよ?」
「落としたんじゃなくって、脱走しちゃったんです…」
「脱走? 何言ってんだよ! お前、満員電車で何やってんだよ! 恥ずかしいだろーが…」
「……恥ずかしい?」
「だってさっきからみんなが見てるし…」
さっきから、みんなの視線が気になってしょうがない。
「見てないですよ。みんな自分の事しか興味ないんだから…」
「見てるって! 恥ずかしいから、10円やるから、もうやめろって!」
慌てて10円玉を財布から出し、女の子へ差し出した。
「その10円はあなたのものでしょ? 私は自分の10円を探してる訳だし…」
「10円は10円だろ? さあ、早く立ち上がって…」
突然、10円玉を持った手を掴みながら、女子高生が立ち上がった。
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