6章:衝撃的な出会い

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「あのさ… はっきり言わせてもらうけど、あんたがどんだけ恥ずかしいかなんて私にゃ関係ねーんだよ!」 「……あ、あんた?」 女子高生の突然の変貌に、戸惑う明夫。 「この車両に乗ってる奴らなんて、まったく私たちの事なんて見てないんだからさー…」 「お、大きな声出すなよ! みんなが見るって…」 「見る? ふふん… あんた世間体を気にしすぎだよ…」 「だって見てるじゃないか! ほら!」 車両のほぼ全員が、こちらに注目していた。 「じゃあ聞くけど、なんで誰も助けてくれないのよ?」 「……そ、それは…」 「こんだけ人がいっぱい乗ってんのによー、なんで誰1人として拾ってくれようとしないんだよ?」 「……中には助けようとした人も…」 明夫が車内を見回すと、みんな次々に目をそらす。 「ほら、人間なんて所詮そんなもんよ。信じられるのは自分のみ…」 「……………」 「さあわかったら、あんたも早くこれを財布にしまって、そこをどいてくれない?」 10円玉を持っていた手を、お腹の所に突き返すと、女子高生はまた四つん這いになって探し始めた。 「……ち、違う…」 「だから、どいてくれませんかって、さっきから…」 「……お、俺は違う…」 明夫の中で、何かが弾けた。 「俺は違う! 俺は違うんだー!」 その場にしゃがみ込み、一緒に探し始める。 「…な、なに? 突然大きな声を出しちゃって…」 「ありがとな! ホントにありがとな! 俺は大きな間違いをしてた…」 必死で這いずり回る明夫。 「……ふふ… お礼なんかいいから、早く見つけちまおうよ…」 「おう!」 ざわめく車内。 次の瞬間、驚くべき事が起きた。 みんながしゃがんで探し始めたのだ。 ちっちゃな子から、おじいちゃんおばあちゃんまでもが、必死に探し始めてくれたのだ。 数の力は偉大なもので、数分後10円玉は無事救出された。 電車を降りるときに、2人で深くお辞儀。 車両のみんなは笑顔を返してくれた。
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