プロローグ

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「ケッ、流石は関東の覇者。あの状況で笑うとは」 「新宿戦争を勝ち抜いた、伝説のヤクザですからね。一筋縄じゃいかないっすわ」  その様子を窺い、私服の刑事達が覚めたように会話する。 「幾多の殺しを繰り返しながら、のうのうとふんぞり返りやがって」 「仕方ないっす、なんの物証もない」 「組対の安田も、奴の前に成す術ないしな」 「執念だけじゃ、デカい組織には適わないっすよ」 「どうせならあのまま殺されてればよかったのにな」  彼ら刑事からすればヤクザたる市村は敵だ。いつでもその逮捕と組織の壊滅を願っている。それが叶わぬなら、せめてあのまま撃たれていればよかったのに、そう思うのも仕方ないことだ。  そう思うと益々虚しくなる、呆然と眺めるしかなかった。
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