第一章 引き継がれる意志

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朝比奈(あさひな)君。キミは太一君の親戚だから薄々は気づいている筈だ。どうして我が校に?」  教師が意を決したように訊ねた。生徒の名は朝比奈というらしい。 「太一がいじめられていた件ですか?」  そんな教師の思惑も余所に、朝比奈はアッサリと言い捨てる。言われずともこの学校の実情は知っている、そんな様子だ。 「やはり知ってたか。そこまで知っていて何故?」  ふっと息を吐く教師。 「太一の親父さん、それに太一もがこの高校出身だし。それに俺自身がここへの転校を望んだんです。それとあいつがいじめられてたのは、昔のことでしょ?」  やはり朝比奈は堂々たる態度だ、表情ひとつ変えず答える。 「そうかそれならこれ以上なにも言うまい」  頷く教師、その表情が普段のものに戻った。  相変わらず辺りはざわめきに包まれている。 「ちょ、待てよ」 「きゃははは、こっちだぜ」  二人の生徒がじゃれあうように歩いている。後ろに視線を向けている為、教師達の存在には気づいていないようだ。 「おっと」  教師がそれを避けるように身を引いた。それでも間に合わず、眼鏡をかけた生徒とぶつかった。 「ごめんなさい!」  はっとなる眼鏡、慌てたように視線を向ける。 「ちっ、センセーかよ」  しかし相手が教師だと知った途端、不機嫌そうに吐き捨てた。
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