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「朝比奈君。キミは太一君の親戚だから薄々は気づいている筈だ。どうして我が校に?」
教師が意を決したように訊ねた。生徒の名は朝比奈というらしい。
「太一がいじめられていた件ですか?」
そんな教師の思惑も余所に、朝比奈はアッサリと言い捨てる。言われずともこの学校の実情は知っている、そんな様子だ。
「やはり知ってたか。そこまで知っていて何故?」
ふっと息を吐く教師。
「太一の親父さん、それに太一もがこの高校出身だし。それに俺自身がここへの転校を望んだんです。それとあいつがいじめられてたのは、昔のことでしょ?」
やはり朝比奈は堂々たる態度だ、表情ひとつ変えず答える。
「そうかそれならこれ以上なにも言うまい」
頷く教師、その表情が普段のものに戻った。
相変わらず辺りはざわめきに包まれている。
「ちょ、待てよ」
「きゃははは、こっちだぜ」
二人の生徒がじゃれあうように歩いている。後ろに視線を向けている為、教師達の存在には気づいていないようだ。
「おっと」
教師がそれを避けるように身を引いた。それでも間に合わず、眼鏡をかけた生徒とぶつかった。
「ごめんなさい!」
はっとなる眼鏡、慌てたように視線を向ける。
「ちっ、センセーかよ」
しかし相手が教師だと知った途端、不機嫌そうに吐き捨てた。
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