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「くっ……」
恥ずかしさからか紅潮する眼鏡。実際人前で謝るなんて行為は初めてだった。
「……行くぞ」
「あ、ああ」
やがて仲間と共に、その場を逃げ去るように歩みだした。
「ありがとう朝比奈君。正直驚いたがね」
その二人の姿が消えたのを確認すると、教師が言った。
「ほめないで下さいよ、“年上は敬う”。常識でしょ」
朝比奈が返す。その表情を眩しげに見つめる教師、そして再び歩き出した。
「常識か。……そうだね私達はそう習ってきたかな。……いつからだろう、常識とか当たり前って言葉が、普通じゃなくなったのは」
確かに朝比奈の言った台詞は全て常識だ。……いつからだろう、その常識が通用しなくなったのは……
「常識は常識です。他人を思えば“常識”。己の保身だけなら“非常識”。"普通"とか"当たり前"って言葉も同じ意味っすよ。……うまく言えないけどそれが俺の見解」
それでも朝比奈の台詞は堂々としたもの、教師の戸惑いも薄れていくのを感じる。
「そうかも知れないね。だがその行為は我が校では孤立しかねないよ」
「あはは、そうですよね。でもいいんですよ“孤立”は慣れてるし。それに孤立を恐れては仲間なんか作れないでしょ?」
「へ?」
足を止め朝比奈を凝視する教師。
「……キミはおかしなことを言うね」
そしてグッと朝比奈を見据えた。
その視線に戸惑いの表情を見せる朝比奈。なにやら考え込む表情だ。
「すみません。それが俺っすから」
それでも迷うことなく言い切った__
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