第一章 引き継がれる意志

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「くっ……」  恥ずかしさからか紅潮(こうちょう)する眼鏡。実際人前で謝るなんて行為は初めてだった。 「……行くぞ」 「あ、ああ」  やがて仲間と共に、その場を逃げ去るように歩みだした。 「ありがとう朝比奈君。正直驚いたがね」  その二人の姿が消えたのを確認すると、教師が言った。 「ほめないで下さいよ、“年上は(うやま)う”。常識でしょ」  朝比奈が返す。その表情を眩しげに見つめる教師、そして再び歩き出した。 「常識か。……そうだね私達はそう習ってきたかな。……いつからだろう、常識とか当たり前って言葉が、普通じゃなくなったのは」  確かに朝比奈の言った台詞は全て常識だ。……いつからだろう、その常識が通用しなくなったのは…… 「常識は常識です。他人を思えば“常識”。己の保身だけなら“非常識”。"普通"とか"当たり前"って言葉も同じ意味っすよ。……うまく言えないけどそれが俺の見解」  それでも朝比奈の台詞は堂々としたもの、教師の戸惑いも薄れていくのを感じる。 「そうかも知れないね。だがその行為は我が校では孤立しかねないよ」 「あはは、そうですよね。でもいいんですよ“孤立”は慣れてるし。それに孤立を恐れては仲間なんか作れないでしょ?」 「へ?」  足を止め朝比奈を凝視する教師。 「……キミはおかしなことを言うね」  そしてグッと朝比奈を見据えた。  その視線に戸惑いの表情を見せる朝比奈。なにやら考え込む表情だ。 「すみません。それが俺っすから」  それでも迷うことなく言い切った__
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