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学生と隊員の追いかけっこはまだ続いていた__
幾多の車両間を駆け抜け、逃走劇を繰り広げている。
学生の駆るバイクのスピードは圧倒的だった。鮮やかに車体をくねらせ、圧倒的スピードで逃げ去っていく。まるで手慣れたプロライダーのそれだ。それゆえ事故る可能性は少ないと感じていた。
だがその的確な判断力が、逆に白バイ隊員の闘争心を駆り立てていた。腐っても俺は二輪のプロ、学生風情に負ける訳にはいかないとのプライドが追跡に拍車を掛けていた。
「ナンバーを遮光で読めなくするとは、とんでもない古いカモフラージュぶりだな」
それでも冷静さだけは保っていた。スピード勝負に徹してもいいが自分は法の番兵、ここは規律に基づき的確な判断が必要。
「……やはりガキはガキだ」
冷静に努めて通信システムのスイッチを押す。
「ああ、俺だ。現在○○街道を△△方面に向かい、暴走車両を追走中。車種は“黒いHONDA”至急衛星追跡及び登録確認を願う」
そして交機本部に訊ねた。この場合、必要なのは的確な判断。いくら事故る確率が少ないとて、あのような行為を見逃す訳には行かない。
最善の方法はその素性を確認して、後日改めて確保すること。自分としては納得できないが、それが平和的解決法だ。
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