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朝の光が射し込む室内、アンティーク調の机と黒革のソファーが置かれ、壁際には多くの額縁が飾られている__
ここは桜真高校の校長室だ、一番奥の中央の席にはひとりの女が座っている。黒いスーツを着込む四十代中程の女。眼鏡を掛けて長い黒髪を後方で結わえている。落ち着き払った様子でパソコンを操作していた。
更にその手前には二十歳程の女が佇んでいた。グレーのスーツに身を包む、どこか気の弱そうな女だ。
コンコンと扉をノックする音が響く、それに反応して眼鏡の女が上目遣いで視線をくぐらす。
「どうぞ」
「失礼します」
挨拶と共に入室してきたのは先程の教師だ、更にその後から朝比奈が続く。
「町村教頭、転校生を連れてきました」
眼鏡の女は町村というようだ、どうやら教頭らしい。
「そう、こちらまで来て」
その町村の言葉で机の前に歩み寄る二人だが、町村は視線を向けない。黙々とパソコンのディスプレイに視線を落としている。
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