プロローグ

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 高く澄んだ青空。ひっきりなしにヘリコプターが飛び交っている。それはテレビ局の報道ヘリ、マイク片手にカメラに向けてなにやら喚いている。  そこでカメラのアングルが切り替わる。 「私はいま東京国際空港の前にいます。ご覧下さいこの物々しい警備! 至る所に立ち尽くす黒いスーツの男達!」  テレビの画面に映し出されるのは声を荒げるリポーターの姿。その後方には幾多の人々の姿が浮かぶ。延々と続くのは、幾多の警察関係車両と黒塗りの高級車。ガヤガヤした喧騒の中にも重苦しい空気が感じられる。  その騒然となる状況を余所に数人の男達がターミナルから現れた。その中央を歩くのは四十代後半程の目つきの鋭い男だ。 「あ、現れました! “関東桜共会(かんとう おうきょうかい)”会長、市村(いちむら)氏です! 市村氏はアメリカ裏社会を牛耳るドン・ガルシアとの五分の杯を交わし、日本に戻ってきました! 現状日本のヤクザ渡世を二分する組織会長に昇り詰めたのです!」
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