1608人が本棚に入れています
本棚に追加
追跡劇は街中でのバトルと化していた__
ガヤガヤと響き渡る喧騒、絶え間なくこだまする甲高いクラクション。疾駆する車両も徐々に数を増してくる。
「チッ、この先は……」
視線を凝らして、神経を研ぎ澄ませる学生。ウインカーと共に車体をくねらせて右折させる。
「馬鹿め……」
それを後方から追走する白バイ隊員。その口元に笑みが浮かんだ。
右折させたその先に広がる光景、それは幾多の車両がひしめく大渋滞の光景だった。
「わははは! ここはいつも大渋滞の魔の地点。……終わりだぜ小僧!」
隊員の勝利を確信するかのような高笑いが響く。
ここはバイパス線と交差する地点で、いつでも大渋滞する場所だった。しかも朝の通勤ラッシュとかぶると、下手すれば数十分は足止めを喰らう。つまりは袋小路状態だ。いってみれば学生は追い込まれたネズミも同じだ、後はゆっくりと料理すればいい__
「へっ。それは百も承知の上だぜ!」
だが学生は一向に気負わない。車の群れに突っ込むようにアクセルを吹かした。
「な、なんだと!?」
隊員の顔色が蒼白になる。有り得ない展開に度肝を抜かれた。
街中に驚愕の声が響き渡る『なんだよ? クレージーな奴だな!』『なんちゅうハンドル捌きだ? あっさりかわしてるぞ』学生はバイクを華麗に操り、幾多の車両の間を擦るか擦らないかのギリギリで駆け抜けていく。
最初のコメントを投稿しよう!