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「くっ、こちとら白バイ隊員歴十二年のベテランだぞ! あんなガキに負けはせんわ!」
だがその行為が隊員の闘争心に火を点けた。アクセルを吹かし追跡を再開する。
「嘘だろう。……追ってくるよ」
今度は学生が呆れる番だ。覚めたようにバックミラーを睨み付ける。
再び響き渡る叫び。『今度は白バイだ!』『うおっ、車体に傷付けたな!』『ぎゃーあ! ミラーが取れた!』今度のそれは悲鳴にも似た悲痛なものだ。
「邪魔だ、邪魔だぁーー!」
それでも隊員は一向に気にしない。数台の車に傷を刻みながら前へ前へと進出する。かくして街中にクラクションと悲鳴がこだました。
「しかし、ここまで追いかける馬鹿がいたとはな」
グッと睨みを利かす学生。渋滞は粗方抜け出していた。
信号はまだ赤を示している。眼前に広がるのは交差する国道バイパス、幾多の車両が猛スピードで駆け抜けていく。
そこを過ぎなければ目的地には辿り着けない。しかも背後からは白バイ隊員が鬼の形相で追跡してくる__
「仕方ない。ぶっ込むか!」
叫びと共にアクセルを解放する。真っ白な白煙を上げてバイパスにブッ込んだ。
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