風のように ～関東死闘編～

第一章 引き継がれる意志

「嘘……だろ……」
　そのあり得ぬ状況に流石の隊員も愕然となる。恐怖を覚え、バイパス手前でブレーキをかけた。

「なんだよ！？　信号無視でバイクが突っ込んでくるぞ！」
「自殺でもする気か？」
　愕然と叫ぶドライバー達の眼前、学生は怯む事無くぶっ込んでいく。

「とんでもないクレイジーだよ……」
　呆れ気味に吐き捨てる隊員。確かに無茶な行為に思える。しかし華麗なテクニックと的確な判断力を併せ持てば、そこを横断するのも不可能ではない。なにより何故か、あの学生ならば大丈夫だろうと思えた。そのようなオーラが背中から感じ取れた。

　だがその視線にとんでもない光景が映る。巨大な二連トレーラーが学生の通路を塞ぐように走り込んできたのだ。流石にその長さはスルー出来ないだろう。ブレーキを掛けなければ大クラッシュは確実だ。でなければそれは自殺行為にも等しい＿＿

　それでも学生はスピードを殺しはしない。ただ真っ直ぐに、巨大な壁と化したトレーラーを見据えるだけ。