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それから数ヶ月の時が過ぎる__
写真を切って貼り付けたような青空が広がっていた。地上は萌えるような満開の桜で薄紅色に染まっている。
遠くに見えるのは天まで聳える摩天楼。そこへ続く国道線を一台の黒いバイクが驀進していた。
「やべーな、初日から遅刻だぜ」
ライダーが呟く。バイクを転がしているにもかかわらずヘルメットを着用せずゴーグルを装着しているだけだ。身に包んだブレザーと覗かせるその顔からして、十七~十八歳程の学生のようだ。どうやらかなり急いでいるらしい。
そして一台の車両を抜き去った。
「マジでやばいよな。いま抜いたのって……」
同時になにかに戸惑う。
それを如実に表すように後方で赤い光が輝いた。
『前のバイク、止まりなさい!』
けたたましいサイレンと共にスピーカーから声が放たれる。それは白バイだ、少年の駆るバイクのスピードに反応したのだろう。
「やっぱ白バイかよ!」
それでも学生はスピードを緩めない、更にアクセルを吹かしだす。
「なにぃ? 逃げる気か!」
白バイを駆る隊員の口元が一文字に閉じられる、呼応して白バイを加速させる。かくして街中を舞台に激しい追跡劇が開始された__
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