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気がついたら私は昔ながらの日本庭園にいて思わず辺りを見渡して見覚えのある景色だと悟った。
「ここは…」
そこは遠い日に見た記憶…誠也と出会った思い出深い景色…
日本庭園を歩いて行くと…記憶の通りに誠也が一人でいた。
「そうだ。あの時も――…」
あの時も誠也は一人だった。
その澄んだ瞳や小さな体からは、どこか寂しそうな雰囲気だった。
今でもその記憶は鮮明に蘇る。
「誠也は一人でハーモニカを…」
誠也の奏でるハーモニカの音色に耳を澄ませて聞き入っていると…どこからともなく声がする。
「…んせ……せん…」
「……ん?何だ」
「せんせぇーっ!」
「――うおっ!?」
そこで私は夢から覚めた。
………………………――――――
私を叩き起こしたのは私の優秀な助手で秋月誠也という子供だ。
「またソファーなんかで寝て…」
「あー…寝違えたか?」
「そのまま折れればよかったのに…先生はムダに丈夫ですよね」
「相変わらず酷いな、キミは!」
この通り…誠也くんは可愛らしい容姿をしているが、毒舌でドSな性格で私を痛めつけるのが趣味…しかし、私はドMだ!
あの程度なら逆に快感になる。
「何ジロジロ見てるんですか。
早く起きてください。あの先生に珍しくお客さんなんですから…
待たせたらひっぱたきますよ?」
「キミが叩くの?!」
ちなみに私は私立名探偵(自称)の長谷川光次…性癖はドMだ!
「はぁ…初めて会った時はあんな可愛かったのにどうして――」
「無駄口はいいから早く!」
「はぃぃぃ!?」
私は急いで居間へ向かった。
そこに待っていたのは私の友人で弁護士の東郷鉄矢だった。
「長谷川…久しぶりだな」
「あの時、以来か…」
「誠也くんは元気か?」
「あぁ…毎日私を痛めつけるほど元気が有り余っているよ」
「それはよかった。あの事件から立ち直れたみたいで――」
「立ち直れた…か。私には誠也はまだ無理してるように見える。
完全に立ち直ったとは言えない」
「そうなのか…?」
「あの事件で…誠也は心に大きな傷を負って人間不信になった。
いつか…あの子が心から信じれる人を見つけることが出来たら…
よかったと抱き締めてやりたい」
「思い出すな…」
あれは私が探偵を始めた頃――…
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