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カーテンの隙間から朝日が部屋に射し込む。
目覚ましが鳴るより先に射し込む朝日の眩しさを瞼に浴びて目を覚ました私は、ベッドの上でゆっくりと上体を起こした。
『…起きてたんだ…?』
同じベッドの隣に寝ていた夫が静かな声で私に尋ねる。
『ううん、今起きたばかりよ?ヒロも今朝は早起きだね』
べッドの上で顔を見合わせ微笑み合う。
お互いに寝癖がついて乱れた髪、寝起きの顔は決して見映えのいいものでは無いけれど、微笑み見つめ合う二人だけの時間と空間は優しく輝いているかのように感じられた。
ピピピピピ
我が家に置かれてから初めて役立たずとなった目覚ましが鳴り出す。
『やだ、いい雰囲気だったのにね』
目覚ましのボタンを押して音を消し、苦笑しながら再び夫と目を合わせて呟けばベッドから降りてカーテンを開いた。
本日は晴れ。
季節は春になりたて
桜が咲き始めたばかり3月の中頃である。
小学校の教師をしている夫とは三年前の春に夫婦となった。
残念ながら、子供はまだ居ない。
早く孫を見たいと急かす義母とは折りが合わず
両親の居ない私を庇って唯一の味方になってくれる夫の優しさから、夫の実家とは疎遠になっている。
『今日は仕事を休んで一日ずっと家に居て欲しいんだけどな…』
テーブルに皿を並べ、朝食の支度をしながら夫に話しかける。
『うーん、今日は入学式だから休めないな…ピカピカのランドセルしょった、おチビさん達を迎えてやらなきゃな』
『……ぅーそう言うってさぁ、分かってたんだけどぉ』
最初から答えの分かっていた我が儘を言った後に、拗ねたようで甘えたような声を出して夫に擦り寄ると
夫は笑って唇に軽いキスをしてくれた。
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