あの子

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小さい頃は、ほんとに良くつるんでた。 あの時は今とは立場が逆で、俺が夏那を心配する側だったんだ。 小さいくせに、妙に大人っぽくて、周りから浮いてた夏那。 さらに、人見知りって面もあったから、困ったもんだ。 だから、俺が夏那の手を引いて、周りの子に混じっていった。 夏那の手が俺の手の中にある内は、頑張らなきゃ、って思ったんだ。 けど、その関係も中学に入ってから崩れ始めた。 男女の絡みには、目敏く反応して、からかってくる連中が増えたんだ。 元々、そーゆーのが嫌いな夏那だったから、心配した通り、かたくなに俺との接触を拒んで、大好きな読書をして視線から逃れようとしていた。 俺は別に平気なんだけどな。 そんでもって、ついに夏那が登校しなくなった。 女子の声と、男子のウザさに耐え切れなくなったんだとか。 それに加えて、授業がたるいから、自主学習してる、とも、メールでの報告があった。 授業が終わり、部活も無いから、帰りに夏那の家に寄ろうかなー、と思いつつ、鞄に教科書を詰めていた時の事。 見知った、時々つるむ男子が教室に入ってきて、俺に言ってきたんだ。 「お、今日は彼女いねーの?」 俺と彼女の関係は、俺らの学年では、噂の的だから、彼らが言う「彼女」は夏那に他ならない。 鞄に入れる手は休めないまま、俺は当たり障りの無い程度で答える。 「夏那?んー、調子悪いんだとさ」 「へぇ。つまんねぇの。あの子の反応面白いんだよな―」 思わず、手が止まった。 ……コイツが犯人かよ。 ぐっと拳を握って、ボコりたいのを我慢した。今やっても、俺が満足するだけ。 唇を噛み締め、ポケットを探りケータイを構えた。 「サトー」 「あ?」 ケータイのシャッター音が響く。 「あっ、てめっ」 「サトーの写メゲット―。これいる人~」 密かに夏那に送りつつ、周りに振って見れば、笑いながら首をふられた。 「うわっ、サトーのとか」 「自分のクラスに帰れ~」 「野郎のなんて欲しくね―」 笑いながらのってくれるクラスメートに感謝しつつ、俺はそっと周りの輪から外れる。 その流れで、俺はサトーから離れ、夏那にメールした。 今から行く、と。
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