あの子

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「涼、お前はサッカーだろ?」 「ん?」 「お前が打ち込むのは、サッカーだろ?それはいいんだ。けど、あいつらは?なにがやりたいんだ」 困惑したような、そんな雰囲気。 あぁ、クソ! サトー、あったま来た。 お前ら何かに夏那の頭が煩わされる何て、どれだけもったいないことか。 「なっちゃん」 「ん?」 作業に戻りかかっていた夏那の背中に声をかければ、彼女は首を傾げてこちらをみてくれた。 「ちょい、待ってて。何とかしてくるよ」 にかっ、と笑って言ってやれば、彼女はすこしだけ黙って、それからふっ、と笑った。 「……期待してる」 少し笑って夏那が言ってくれたから、一層俺のサトーへの怒りは募ったのだった。 翌日。 「サトー」  教室に入ると真っ先に目に飛び込んできたのは、端の方で集団でひそひそと話してるサトーの集団。クラス違うのに何やってんだか。 俺が近付けば、ニヤニヤと笑いながら中にいれてくれた。 「涼」 「何」 我ながら冷たい声。いつもの馬鹿みたいな調子は出ない。 そりゃあ、夏那にあんな事言わせた奴だから、テンション上がんないのは当たり前だけど。 奴も、俺が異常にテンションが低い事に気付いたらしいけど、ニヤニヤは消さなかった。 最悪。 「彼女の家はどーだったんだよ」  昨日の、話だよな?  って、俺ちゃんと捲いてきたはずなのに……。 「仲良くおしゃべりかぁ?」 「雪路君どーなの?」 あぁ、つけられてた、か。 撒いてたつもりだったんだけどなぁ。 うぅ、夏那に怒られる。    なんていう、俺の私情は置いておいて。……置いておけるほど軽い問題でもないけど。「……一つ、良い?」 リンチみたいなこの空間の中で、俺は静かに切り出した。 奴等の好奇心なんて知ったことか。 「夏那、結構キレてるよ」 皆、ポカンとなっている。 はっ? なんで、ってのが心情かな。  案の定、皆は冷笑、失笑。  当然、後悔の色なんて見受けられない。
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