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イライラをなんとか収め、授業を終えた。
やっと、長い昼休みだ。周りの子はすでに、お弁当を広げている。――私はすでに、早弁で済ませてるから、もう食べる必要は無い。
ぐっと伸びをして眠気を追い払った。
私だって、眠くないわけじゃないんだけどな。
寝ないんじゃなく、ただ机の上では寝れないだけ。
優等生ではないんだよ、私は。
ただ、みんなのようにはっちゃけれないだけ。
「なっちゃん!」
お気楽すぎる声がした。
振り向かなくても分かる。私をなっちゃんなんて呼ぶのは、腐れ縁のあいつだけだから。
面倒いけれど、義務のようなものだから、仕方がなく振り向けば、一番後ろの席から、満面の笑みで奴がテキストを持ってきていた。
雪路 涼。
私の幼馴染み。
「なっ……」
「夏那」
恥ずかしいから、なっちゃんはせめて人前では止めてって言ってるのに。
訂正を入れれば、奴は一瞬つまり、うなづいてやり直した。
「夏那、さっきのとこ教えて」
「あぁ、はいはい。深瀬に聞いてこい」
私よりも理数科目が得意で、かつ涼の隣りの席である男の名前を出すが、こいつは首をふる。
「夏那の方が分かりやすい」
駄々っ子か! お前はっ。
あんまりな発言に頭痛を覚えつつ、だがやらなくちゃ、理解をしてくれないので、仕方がなくテキストを受け取った。
ちゃっかりと私の隣の席に座って、テキストの問題を指さす涼。
こいつが犬だったら、尻尾が振りちぎれる位振っているだろう喜び方。
それに、ため息が禁じ得ないのは、いた仕方がない事だと思う。
馬鹿なこいつにも分かるように、噛み砕いて、噛み砕いて、根本的なとこから教えていく。
ちらりと目を向ければ、意外と真剣な表情で聞いていた。
女の子受けしそうな整った顔に、優しげな表情。
そっと伏せた瞼の睫毛は長くて、色っぽい……らしい。
まぁ、黙ってたら、端正な顔立ちの男子だと言う事は認めるよ。
黙ってたら、な。
色っぽいかどうかは別として。
「夏那?」
「あ、悪い」
一般女子の評価について突っ込みを入れてたら、ぼーっとしてたみたいだ。
「で、分かんないとこは?」
「ここ」
「そう。じゃあ――」
涼の本来の席の隣の男子を指差し。
「深瀬にきくように」
「俺かよ!!」
「うん。頑張れ」
厄介ごとを深瀬に押し付けて、私は涼から逃げる事に成功したのだった。
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