第一章【幸福の前触れ】

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 「あれ?駿司と優奈は??」  話が一区切りしたのか、凛は教室全体を見渡した。  「っだよーあの二人、抜け駆けか?」  透馬くんが笑いながら言う。  「放っておいていいんじゃないかなー?荷物まだ、ここに置いたままだし。」  「だな!てか、あの二人ってなんかいい感じじゃね?」  「どういう意味?」  「俺の予想なんだけど…あいつら、互いに惹かれあってる気する!」  「言われてみると、席も前後だしよくお話してるよねー。」  凛の表情がわずかに曇る。  「何言ってんの!まだ二週間しか経ってないのに惹かれあうとかないって!!」  「なーにムキになってんだよ?まさか…お前、あいつのこと好きなの!?」  「ちっ…違う!なんで、そうなるのよ!!」  「凛ちゃんは、一目惚れとか信じないタイプなんだね。」  「そっ…そうよ。一目惚れなんて……ただの気の迷いよ。すぐ冷めるにきまってるんだから!」  そう大声で言い張ると、凛は鞄を持って"もう帰る!"と叫んで 勢いよく教室を出て行ってしまった。  そんな彼女を、茜ちゃんと透馬くんは―― ただ唖然としながら見ていた。
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