第一章【幸福の前触れ】

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 「もう…なんなのよ!」  凛は廊下の壁を軽く蹴って立ち止まった。  「…本当だったら絶対に邪魔してやるんだから。」  不気味な笑みをうっすら浮かべたかと思うと 上を向いてケラケラ笑いだした。 そして、笑いが治まると階段の方へ歩き出す。 誰かの話声が聞こえ、一瞬立ち止まった。  「駿司くん、なんでこの学校に来たの?」  「公立が落ちたから。」  「あっ…ごめん。変なこと聞いちゃって。」  「別に。優奈はなんで?」  「…ずっと憧れてたんだ。結構、知名度あるし校舎も綺麗だから。それに……」  急に表情を曇らせ下向き加減になる。  「優奈?」  「中学の先輩が…この学校に入学したいってずっと言ってたの。でも……叶わなかった。」  「どういうこと?」  駿司くんが下から私の顔を覗き込もうとした、そのとき―――
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