第一章【幸福の前触れ】

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 「おい、優奈。帰るぞ!」  すでに廊下に出ていた駿司くんが待ちくたびれたように言い放った。  「駿司くんごめん…ちょっとお手洗い寄るから先に帰っててくれないかな?」  「…あっそ。」  そっけなく言うと、そのまま歩き出してしまった。 茜ちゃんは少し戸惑いながら私を見る。  「あっ、気にしないで。大丈夫だから!」  彼女は、申し訳なさそうに頭を下げた――。  「一緒に帰る約束してたなんて…やっぱお前ら出来てんの?」  ケラケラ笑いながら透馬くんは駿司くんに聞いた。  「そんなんじゃねぇーよ。」  「けど、優奈とやけに仲よくね?席が前後ってのもあるかもだけど。」  「なんか違うんだよなー他の女と。」  「は?何それ??」  「てめぇーみたいな奴にはわかんねぇーよ。ばーか!」  「っ…そこまで言うかよ!」  二人の笑い声が、階段のほうで大きく響いた。
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