第一章【幸福の前触れ】

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 本当は、凛が提案したんじゃないかと思うくらい彼女は張り切っていた。  「優奈は、どこ行きたい?」  気づくと真横に、駿司くんがいた。一瞬、慌てて後ずさり。  「えっ…どこって……みんなに合わせるよ。」  「そっか。個人的に行きたいとことかないの?」  「うーん・・・そうだなー」  「例えば、好きな人とはここに行きたいとかさ。」  「好きな人と…夜景が綺麗な場所かな。ロマンチックな場所って憧れちゃう。」  「ふーん。行ったことないの?」  「残念ながら、今までそんないい恋してないから。」  冗談っぽく軽く言い放つと、駿司くんは視線を逸らし黙ってしまった。あとに続ける言葉が見つからない私は なんだか急に恥ずかしくなって視線を落したまま――ただ、チャイムが鳴るのを待った。
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