第一章【幸福の前触れ】

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 「やっと授業終わったー。」  ぐーと背伸びしていると、前の席の駿司くんがこっちを向いた。  「優奈って家の方向、俺と一緒だよな?」  「うっ…うん。そうだよね。」  「じゃあ、一緒に帰るか!」  高校生になって、まだ二週間目。だけど、すでに友達はたくさん出来たしすごく楽しく充実していた。 入学式の日、初めて教室に入って一番最初に目に入ったのが駿司くんだった。そのときから彼を見るたびにドキドキする。 どうしてなのかは、わからない。でも、そのドキドキは確実に大きくなっている。  「ねぇー暇なら、雑談していかない?」  すでに帰る準備ばっちりの凛が私の席にやってきた。  「駿司もどうよ?茜も透馬も残るみたいだけど。」  「俺は、優奈が残るなら残るかな。」  二人の視線が私に向けられた。 私は、二人を交互に見――小さな声で"雑談しよっか"と言った。
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