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とある、幽霊が出そうなくらい不気味で薄暗い古城。
「旨そうだな、お前」
「えっ……?」
いきなりそんな場所に飛ばされたと思ったら、目の前には絶世の美女。
妖艶なウェーブのかかった長い黒髪。
黒を基調とした綺麗なドレス。
そこから覗く、スラッと延びた足。
艶めかしいその仕草、容貌の全てが俺を魅了する。
……いや、待てよ。
『旨そう』ってどういう意味?
「フフフ……苦労して人間界から取り寄せただけはある」
「まさか……?」
薄く笑う美女。
俺は思わず後ずさり。
玉座に腰掛ける美女の背中に、透き通るような羽が四枚。
しかも、額にはまるで昆虫のような触覚まで生えている。
マズい……『旨そう』って性的な意味じゃない。
食物連鎖的な意味だ。
「怯えるな……苦痛はない」
ニヤリと笑った蠅の女王。
逃げ出す俺の背後から、その貪欲な羽音が追いかけた。
そしてその手が首へ……。
今宵今晩この時も、貪る音は響き続ける。
女王が手招く虚構の城で。
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