幻影幼馴染み

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「……はい、コレ」 「あ?何だ、いきなり?」 只今、夏祭り真っ最中。 私は花柄の浴衣を着、それを見た幼なじみの彼は驚いてた。 『孫にも衣装』だってさ。 ぶん殴ってやりたいわ。 「開けて見りゃ分かるでしょ」 「……あぁ、コレか」 私があげた、小さな箱を開けた彼が呟いた。 中身は手作りチョコレート。 ただし、真夏なのでドロドロに溶けている。 「ま……貰っといてやるよ。他に渡すヤツもいないんだろうからな」 「何でアンタは素直に喜べないかな?ありがとうぐらい言ってもいいんじゃない?」 すると、ムスッとした顔になる彼。 その表情の端々に照れとか嬉しさが表れているのに、それを隠すのに必死なんだ。 「お前から貰ったって嬉しくねぇよ!!貰ってやるだけありがたく思え!!」 「……半年も待ってたくせに」 ポロッと涙が零れた。 一度出始めるとボロボロと溢れ出てくる。 泣かないって決めてたのに。 「えっ……いや、えぇっと……おい!泣くなって!!」 彼は必死になって私の涙を止めようとする。 でも、できないんだ。 私は浴衣、彼は分厚いトレーナーにコート。 アイツの時間は、あの時のまま動かない。 「……悪かったとは思ってる。けどな、先に行って待ってるなんて言わねぇぞ!」 泣き崩れる私に背を向けて、だんだん薄くなる彼は叫んだ。 私の視界がぼやけているのか、彼が本当に消えるのか。 私には区別がつかない。 「幸せになって、そんで死ね!じゃないと……次も一緒になってやんねぇからな!」 それだけ言って、彼は消えた。 二度と見る事もなかった。 最後に見たアイツの横顔は、真っ赤に染まった恥ずかしいがり屋な彼だった。 なってやろうじゃん、幸せに。 ただし、お前と一緒になる為じゃないからな。 一発ぶん殴ってやりたいだけだからな。 勘違いすんなよ。 ま……もし一緒になっちゃったとしても、それだけ殴れるからいいかもね。
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